恋愛感情がなくても送金寸前に――SNS型ロマンス詐欺、2026年の最新傾向
その送金、今はしなくて大丈夫です。
相手を疑い切れなくても構いません。
迷ったら、一時間。
その一時間で、家族や友人、銀行、警察など、会話の外にいる人へ画面を見せてください。
「恋に落ちた人が被害に遭う」とは限らない
SNS型ロマンス詐欺という言葉から、
「恋愛感情を抱かなければ、自分は大丈夫」
と思う人もいるかもしれません。
しかし、最近報じられた事例は、それだけではないことを示しています。
名古屋市に住む75歳の女性は、Facebookで、海外にいる医師を名乗る人物とやり取りを始めました。
相手は褒める言葉や親しげな言葉を重ね、顔写真入りの証明書も送ってきました。
女性は相手の説明に不自然さを感じ、「だまされているかもしれない」と疑っていました。それでも会話には楽しさがあり、やり取りを続けました。
やがて相手は、海外にいる娘のために修学旅行費を送ってほしいと依頼。女性は、困っている子どもを助けたいという思いから、170万円を振り込むため銀行へ向かいました。
被害を止めたのは、窓口の職員でした。職員が事情を聞き、不審に思って警察へ連絡したことで、送金は未然に防がれました。
ここで大切なのは、女性が強い恋愛感情だけで動いていたわけではないことです。
会話が楽しかった。相手の家族を助けたかった。
人を信じる気持ちや親切心も、送金の理由に変えられてしまうことがあります。
2026年上半期の最新データ
警察庁が2026年7月31日に公表し、8月5日に訂正した上半期の暫定値では、SNS型ロマンス詐欺は次のようになっています。
- 認知件数:2,509件
- 被害額:246.6億円
- 既遂1件当たりの被害額:984.1万円
- 40代から60代の被害:約8割
- 70代の被害:増加傾向
- 最初の接触手段:ダイレクトメッセージが約9割
- 最初に接触したツール:件数・被害額ともにマッチングアプリが最多
マッチングアプリに続き、被害額ではFacebook、認知件数ではInstagramが多いとされています。
愛知県内でも、2026年6月末までに97件、被害額は約18億円となり、被害額は前年同期の約1.7倍と報じられています。
これは、高齢者だけの問題ではありません。
働き盛りの世代を中心に、幅広い年代が被害に遭っています。
最新事例と統計から見える5つの傾向
1.入口の約9割がDM
知らない相手から届く、短いあいさつ。
投稿への感想。
「おすすめに出てきた」「共通の友達がいる」といった自然に見える説明。
大きな要求からではなく、ごく普通の会話から始まります。
2.マッチングアプリだけでなく、FacebookやInstagramも入口になる
ロマンス詐欺は、出会いを目的としたアプリの中だけで起きるものではありません。
趣味、仕事、出身地、友人関係など、SNSで公開している情報が、親近感を作る材料に使われる可能性があります。
3.「恋愛」より先に「信頼」が作られる
毎日の連絡。
自分を気遣う言葉。
悩みを聞く姿勢。
写真や身分証らしき画像。
こうしたものが重なると、相手の説明に違和感があっても、関係を切りにくくなります。
写真や証明書が送られてきても、本人確認ができたことにはなりません。画像は他人のものを流用したり、加工・生成したりできます。
4.お金の理由が「二人の将来」だけではない
最近の手口では、投資や共同の貯金に誘うだけでなく、
- 家族や子どもを助けてほしい
- 海外にいるため自分では送金できない
- 病気、事故、旅行などで急に費用が必要になった
- 一時的に立て替えてほしい
といった、人の善意を刺激する理由も使われます。
相手を好きかどうかではなく、「助けてあげたい」と思った時点も注意が必要です。
5.疑っていても、送金まで進むことがある
「少し変だ」と感じることと、「送金を止められること」は同じではありません。
長く会話を続けた相手には、
「ここまで信じたのだから」
「もし本当だったら、見捨てることになる」
という気持ちが生まれます。
だから、相手を完璧に見抜くことだけを被害防止の条件にしてはいけません。
お金の話が出たら、相手を判定する前に止まる
SNSやマッチングアプリで知り合い、直接会ったことのない人からお金の話が出たら、次の順番で止まってください。
- 送金・暗号資産の購入・投資サイトへの入金をしない
- 相手との会話をいったん止める
- メッセージ、プロフィール、送金先、URLをスクリーンショットで残す
- 会話の外にいる人へ画面を見せる
- 銀行、警察相談専用電話「#9110」、消費者ホットライン「188」へ相談する
相手の名前を検索しただけで、安心しないでください。
検索結果、顔写真、身分証、投資サイトの利益表示は、信用を作るために用意された可能性があります。
銀行員が止めたのは、「詐欺師を完全に見抜いた」からではない
今回の事例で被害を防いだ銀行員は、相手の正体をその場ですべて証明したわけではありません。
事情を聞き、送金を止め、警察につなぎました。
一人で進んでいた判断に、別の人が入ったのです。
この「一人を二人にする」ことが、振込直前の最後の防波堤になります。
家族から「それは詐欺だ」と強く否定されるのが怖いなら、まず画面だけを見せてください。
銀行窓口で、
「SNSで知り合った人への送金です」
と伝えるだけでも構いません。
最後に
ロマンス詐欺は、恋愛に弱い人だけが遭う詐欺ではありません。
人を信じる気持ち。
会話を楽しむ気持ち。
困っている人を助けたいという気持ち。
その自然な感情が、送金へ向かう理由に変えられることがあります。
だから、自分の気持ちを責める必要はありません。
今は押さなくていい。
今は振り込まなくていい。
一人で決めなくていい。
止まれば、まだ守れます。
迷ったら、一時間。
「この相手を信じてよいのか分からない」「送金を求められている」という場合は、一人で決めず、sagi110.comのLINE相談へ画面をお送りください。確認だけでも大丈夫です。
※この記事は、2026年8月11日時点の警察庁公表資料と報道をもとにした一般的な注意喚起です。個別の事案で被害や犯罪を断定するものではありません。緊急の場合は110番、緊急ではない警察相談は#9110、消費生活に関する相談は188をご利用ください。
出典
- 警察庁「令和8年上半期における特殊詐欺の認知・検挙状況等について(暫定値)」(2026年7月31日公表、8月5日訂正)
- CBCテレビ/TBS NEWS DIG「SNS型ロマンス詐欺は幅広い世代で被害が発生」(2026年8月11日)


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