はじめに

近年、特殊詐欺の手口が多様化・巧妙化し、被害額が過去最悪の約722億円に達しました。​なぜ、これほど多くの人がだまされてしまうのでしょうか？​その背景には、私たちの心理的な特性が関係しています。​本記事では、心理学者の藤井靖教授の解説をもとに、特殊詐欺の手口とその防衛術を紹介します。​

特殊詐欺の現状

警察庁の発表によると、2024年に認知された特殊詐欺の被害額は約722億円で、認知件数は2万987件と前年から1割増加しました。​2025年に入ってからも状況は悪化し、2月末時点での被害額は前年同時期の3.6倍、認知件数も1.8倍と、過去最悪の状況が続いています。​

巧妙化する詐欺の手口

警察官や検事、市町村の職員など、公務員を名乗る詐欺が増加しています。​「あなたの口座が不正に使われている」などと告げ、SNSのビデオ通話で身分証の画像を示し、資金調査と称して現金を振り込ませる手口です。​

動画視聴詐欺

「動画を見るだけで報酬がもらえる」と誘い、実際に収益が振り込まれた後、「操作ミスの手数料がいる」「時間超過の違約金が必要」などと、報酬よりはるかに多い金額をだまし取る手口です。​

なぜ人はだまされるのか？心理的な背景

感情の喚起

非現実的な話や、予想外の出来事は人の感情を強く刺激します。​この「感情の喚起」によって、冷静な判断を司る前頭前野の働きが阻害され、詐欺師の言葉を信じやすくなってしまいます。​

アンコンシャス・バイアス（無意識の偏見）

「公務員はしっかりしている」「信頼できる職業の人は嘘をつかない」といった無意識の偏見が、詐欺師の言葉を信じる要因となります。​特に地方では、公務員に対する信頼が強く、だまされやすい傾向があります。​

2025.04.28

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認知の逆転

最初は詐欺師が「お願いする側」で、被害者が「お願いされる側」ですが、報酬を受け取ることで立場が逆転し、被害者が「お願いする側」になります。​この「認知の逆転」により、詐欺師の指示に従いやすくなります。​

連言錯誤

詐欺師は、多くの情報を一気に投げかけることで、被害者の思考を停止させます。​これにより、信ぴょう性の低い話でも本当のように感じてしまい、詐欺に引っかかってしまうのです。​

被害を防ぐための具体的対策

時間を置く

感情が高ぶった状態では冷静な判断ができません。​一度電話を切るなどして、時間を置き、感情を落ち着かせることが重要です。
突然の電話やメッセージに焦る気持ちはわかりますが、
まずは「即答しない」を徹底しましょう。

• 一旦、電話を切る
• メールやメッセージはすぐ返信せず、少し時間を置く

それだけで、感情に支配されるリスクがグッと下がります。
特に「今すぐ振り込まないと大変なことになる」などと急かされた場合は、確実に詐欺を疑うべきです。

他者視線を入れる

詐欺師たちは「このことは誰にも言わないで」「絶対に内緒にしてね」と言ってきます。
それは、第三者の冷静な意見が入ると、嘘がバレやすいことを知っているからです。

だからこそ──

• 家族
• 友人
• 金融機関
• 消費生活センター

誰でもいいので、誰かに相談しましょう！
あなたが冷静になれない時、他の人の目線が「本当にそれ大丈夫？」と気づかせてくれます。

特に注目すべき詐欺手口まとめ

• 公務員詐欺
  警察官や市職員になりすまし、「あなたの口座が不正利用されている」と資金移動を促す。
• 動画視聴詐欺
  「動画を見るだけで収入！」とうたい、最初は少額の報酬を払った後、高額な手数料や違約金を請求。

このように、「信頼させてから一気にだます」手口がますます巧妙になっています。

自分と家族を守るために意識したいこと

✅ 予想外の出来事には、まず「冷静に！」
✅ 即答しない。すぐ振り込まない。
✅ 「秘密にして」と言われたら、必ず誰かに相談。
✅ お金の話が出たら一度立ち止まる。
✅ どんな立派な肩書きの人でも、疑う視点を忘れない。

これらを意識するだけでも、被害リスクを大きく下げることができます

まとめ