AIに相談して詐欺に気づく。でも、なぜ「被害後」なのか?
「AIに相談したところ、詐欺だと分かった」
最近、そんな詐欺被害の事例を目にするようになりました。
AIが詐欺に気づくきっかけになった。
これは、とても大きな可能性だと思います。
しかし、私は別のところが気になっています。
AIに相談したのは、お金を動かした「後」なのです。
ここに、AIを詐欺防止に活用するうえでの大きな課題があるのではないでしょうか。
4300万円を失った後、AIに相談
北海道新聞で、札幌市の60代男性がSNSを介した投資詐欺で、約4300万円をだまし取られた事例が報じられました。
男性はSNS上の投資広告をきっかけにLINEグループへ誘導され、株式投資を始めました。
記事によると、グループでは「AIプログラムが株購入を助言する」と説明されていました。
投資アプリには利益が表示され、男性は次第に投資額を増やしていきます。
最終的には父親の遺産約3000万円もつぎ込み、被害額は約4300万円に達したと報じられています。
その後、男性がAIチャットに相談したところ、詐欺を指摘されました。
AIは役に立ったのです。
しかし――
相談したのは、4300万円を動かした後でした。
別の被害でも「AIへの相談」は送金後だった
同じような事例は、これだけではありません。
50代女性がSNSを通じて知り合った人物から暗号資産投資を勧められ、3回にわたり約136万円相当の暗号資産を送信した事件がありました。
アプリ上では利益が出ているように表示されていました。
その後、さらに追加投資を求められたことで不審に思い、AIに相談。
そこで詐欺を指摘され、被害に気づきました。
ここでもAIは詐欺に気づくきっかけになっています。
しかしやはり、
相談したのは、お金を送った後でした。
なぜ「送る前」にAIへ相談しないのか?
私は以前、
「お金を振り込む前にAIに相談すれば、詐欺被害を防げるのではないか」
と考えていました。
私自身、詐欺被害に遭ったからです。
被害に遭ったあとなら、
「あのメッセージをAIに見せればよかった」
「振り込む前に相談すればよかった」
と思えます。
でも、ここで重要なことに気づきました。
それは、私が「被害に遭った後」だから思えることなのではないか。
詐欺の最中にいる人は、相手を詐欺師だと思っていない可能性があります。
相手を信用している。
本当に利益が出ていると思っている。
正しい投資をしていると思っている。
そういう人が、
「もしかしたら詐欺かもしれない。AIに聞いてみよう」
と思うでしょうか。
「怪しいと思ったら相談」では遅いことがある
ここが重要です。
これまで詐欺防止では、
「怪しいと思ったら相談してください」
と繰り返し呼びかけられてきました。
もちろん大切です。
しかし、本人が怪しいと思っていなければ、その行動は始まりません。
そこで、相談する条件そのものを変えてみます。
「怪しいから相談する」ではなく、
「お金を動かすから確認する」。
これなら、相手を疑っている必要はありません。
お金を動かす前に「3つの確認」
特に、SNSやLINEなどで知り合った相手からお金の話が出た場合は、その場で送金せず、次の3つを確認してください。
① 一度止まる
その場で振り込まない。相手から期限を示されたり急かされたりしても、一度その場を離れます。
② 一人で決めない
家族、友人、金融機関、警察、消費生活センターなど、相手とのやり取りに関係していない第三者へ話します。
③ AIも「確認相手の一人」として使う
相手から届いたメッセージや投資の説明についてAIへ質問し、不自然な点がないか確認する方法もあります。
ただし、AIの回答だけで「安全」と判断しないこと。
AIはあくまで、立ち止まって別の視点から考えるための一つの手段です。
AIに「詐欺かどうか」を決めてもらう必要はない
AIを詐欺防止に使うというと、
「AIが詐欺を判定してくれる」
と考えがちです。
でも私は、そこだけがAIの役割ではないと思っています。
たとえばAIから、
「その投資会社を確認してください」
「利益を保証する表現には注意してください」
「第三者にも相談してください」
と言われる。
それだけでも、いったんスマートフォンから指を離すきっかけになります。
大切なのは、
AIが100%詐欺を見抜くことではなく、自分が一度止まること。
なのです。
「迷わない人」をどう止めるか
さらに難しい問題があります。
相手をすっかり信用して、
本人にはほとんど迷いが生じていない場合です。
実際、別の投資詐欺事件では、銀行員が振り込み前に詐欺の可能性を指摘して警察への相談を勧めたにもかかわらず、男性が別の金融機関から160万円を振り込んだ事例もありました。
本人の中に「大丈夫かな?」という感覚が生まれなければ、
「迷ったら止まりましょう」だけでは届かないことがあります。
だから私は、もう一つの停止ルールが必要だと考えています。
自分が迷っていなくても、誰かが「待って」と言ったら止まる。
自分の違和感だけに頼らない。
家族、友人、銀行員など、誰か一人の違和感も停止スイッチにするのです。
「迷ったら、一時間。」そして、その前に
私が伝え続けているのが、
迷ったら、一時間。
です。
「本当に大丈夫かな?」
そう感じたら、お金を動かさない。
一時間置く。
一人で決めない。
これは変わりません。
ただ、今回の被害事例から、もう一歩進めたいと思います。
自分が迷ったら、一時間。
誰かが止めたら、それも一時間。
そして、
迷っていなくても、初めての相手やSNS上の投資話に大きなお金を動かす前には、一度確認する。
詐欺だと分かってから止まるのではありません。
AIに相談するのも、被害に遭ってからではなく、その前に。
「怪しいから相談する」のではなく、「お金を動かすから確認する」。
この習慣が広がれば、AIは「被害に気づくための道具」から、
被害を起こさないための道具
にも変わっていくのではないでしょうか。


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