「怪しい」と思わない人をどう止める?銀行員が止めても160万円を振り込んだ投資詐欺
詐欺被害を防ぐため、私はこれまで、
「迷ったら、一時間。」
と伝えてきました。
「本当に大丈夫かな?」
「ちょっとおかしいな」
そんな小さな違和感を覚えたら、その場でお金を動かさない。
一時間止まり、誰かに相談する。
私はこれが、詐欺被害を防ぐ最後の防波堤になると考えています。
ところが、北海道で起きた投資詐欺のニュースを見て、もう一つ考えなければならないケースがあることに気づきました。
それは、
相手をすっかり信用していて、自分ではほとんど迷っていない人です。
銀行員が「詐欺では?」と止めた
報道によると、75歳の男性が暗号資産への投資名目で、現金160万円をだまし取られました。
男性は金融機関を訪れ、
「友人の友人が暗号資産で利益を得ていると聞いた」
という趣旨の説明をして、振り込みを依頼しました。
これを聞いた銀行員は不審に思います。
詐欺の可能性を伝えて男性を説得し、警察への相談も勧めました。
ここまで聞くと、
「これなら被害を防げたのでは?」
と思うかもしれません。
ところが、男性は振り込みをやめませんでした。
「急いで振り込みたい」
男性は銀行員から止められても、「急いで振り込みたい」という趣旨の話をしたと報じられています。
銀行側は警察へ通報しました。
しかし、警察官が到着したときには――
男性はすでに別の金融機関から160万円を振り込んでいました。
ここが今回の事件で、私が最も考えさせられたところです。
銀行員は異変に気づいた。
詐欺の可能性を伝えた。
警察への相談まで勧めた。
それでも、お金は動いてしまったのです。
この男性には「迷い」がなかったのだろうか?
私はこの記事を読んで、一つの疑問を持ちました。
男性は160万円を振り込むまでに、
「本当に大丈夫かな?」
「もしかしたら、おかしいのでは?」
と、一度でも思ったのでしょうか。
これは報道からは分かりません。
ですから、「男性には迷いがなかった」と断定することはできません。
ただ、もし違和感を感じながら振り込んだのであれば、その瞬間に止まる仕組みが必要だったと思います。
そして、もう一つ。
もし本当に相手を信用していて、ほとんど疑うことなく振り込もうとしていたのだとしたら――。
私は、こちらのほうが怖いと思います。
「迷ったら止まる」には、まず迷いが必要になる
「迷ったら、一時間。」
これは今でも大切な考え方だと思っています。
しかし、考えてみれば、この言葉には一つの前提があります。
本人の中に「迷い」が生まれることです。
相手を完全に信用していたらどうでしょう。
「これは絶対に大丈夫」
「本当に利益が出る」
「早く振り込まなければ」
そう思い込んでいる人に、
「怪しいと思ったら相談してください」
と言っても、本人はそもそも怪しいと思っていないのかもしれません。
ここに、詐欺防止の難しさがあります。
自分が迷わなくても「誰かが迷ったら」止まる
では、どうすればいいのでしょう。
今回の事件から、私はもう一つの停止ルールが必要だと考えるようになりました。
自分が迷わなくても、誰か一人が「待って」と言ったら止まる。
家族。
友人。
銀行員。
警察。
身近な人。
誰でもいい。
自分では、
「絶対に大丈夫」
と思っていても、誰か一人が、
「それ、おかしくない?」
「ちょっと待った方がいい」
「詐欺かもしれないよ」
と言ったら、その場ではお金を動かさない。
これをルールにしてしまうのです。
「誰が正しいか」は、その場で決めなくていい
ここで大切なのは、
「自分と銀行員、どちらが正しいのか」
と、その場で結論を出す必要はないということです。
投資話が本物かもしれない。
詐欺かもしれない。
まだ分からない。
だったら――
振り込まなければいい。
一時間置く。
家に帰る。
家族に話す。
警察や消費生活センターに相談する。
必要ならAIにも聞いてみる。
そして、もう一度調べる。
詐欺だと証明できたから止まるのではありません。
「誰か一人が疑った」。
それだけで、いったん止まる理由として十分なのです。
詐欺防止に「二つの停止スイッチ」を
今回の事件から、私は詐欺防止には二つの停止スイッチが必要なのではないかと考えています。
【停止スイッチ①】自分の違和感
「本当に大丈夫かな?」
「なんとなく変だな」
そう感じたら、
迷ったら、一時間。
【停止スイッチ②】第三者の違和感
自分は大丈夫だと思っていても、
「待った方がいい」
と誰か一人でも言ったら、
それも、一時間。
どちらか一つのスイッチが入ったら、お金を動かさない。
このくらい単純なルールのほうが、いざというとき実行しやすいのではないでしょうか。
「私は騙されない」という人にこそ伝えたい
詐欺師は、最初から「怪しい人」として近づいてくるとは限りません。
信用できる人。
親切な人。
自分を助けてくれる人。
利益をもたらしてくれる人。
そう感じさせるからこそ、お金を動かしてしまうのでしょう。
だから、
「私は怪しいと思ったら振り込まないから大丈夫」
だけでは十分ではないのかもしれません。
本当に怖いのは、
「怪しい」と思えなくなっているときです。
そんなとき、自分以外の誰かの「待って」が、最後の防波堤になる可能性があります。
自分が迷ったら、一時間。誰かが止めたら、それも一時間。
今回の事件では、銀行員という「止める人」がいました。
それでも被害は防げませんでした。
だからこそ、私たち自身にも簡単なルールが必要だと思います。
自分が迷ったら、お金を動かさない。
そして、
自分が迷っていなくても、誰かが止めたら、お金を動かさない。
その一時間で、本当に投資先が存在するのか調べることができます。
家族に話すこともできます。
警察などに相談することもできます。
一時間後、それでも問題がないと確認できれば、そのとき改めて考えればいい。
でも、振り込んでしまったお金を取り戻すことは、簡単ではありません。
迷ったら、一時間。
そして、もう一つ。
誰かが止めたら、それも一時間。
「詐欺を見抜く」だけではなく、
お金を動かす前に、止まれる仕組みを。
私は、この考え方を広げていきたいと思っています。


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