「お礼詐欺」とは？振込詐欺の原型に迫る

現代では「振込詐欺」として知られる手口。実はこれには、江戸時代にまでさかのぼる「お礼詐欺」と呼ばれる興味深い原型があることをご存じですか？巧妙な手口と心理戦術で知られるこの詐欺手法が、当時どのように行われ、どんな人々を巻き込んでいたのかを深掘りしながら、現代の詐欺とのつながりを探ります。

「お礼詐欺」とは？

• 手口の概要
  詐欺師が道で「落とし物」を拾った人に対し、「これは自分の大切なものだからお礼をしたい」と話を持ち掛けます。そして、現金や高価な品物を渡すふりをしながら、逆に被害者からお金を巻き上げるというものです。
• 心理的トリック
  1.被害者に「良いことをした」という満足感を与える。
  2.お礼をもらえるという期待感を巧みに操る。
  3.結果として「少額のお金を先に出して」という申し出に応じさせる。

江戸時代の「お礼詐欺」の実例

実例：親切心を利用した手口

江戸の町で有名だった「お礼詐欺」の一例に、こんな話があります。

• 状況：
  詐欺師がわざと道に財布や貴金属を落とし、通りかかった人に拾わせます。すると、「これは私の大切な家宝です！お礼をさせてください」と丁寧に頭を下げる。
• 続き：
  「しかし、手元にお礼を用意する現金がなく困っています。すぐに用意しますので、少しお金を貸していただけますか？」と持ち掛けます。親切心からお金を貸した被害者が後に詐欺だと気づくころには、詐欺師は姿を消していたのです。

「お礼詐欺」に関する逸話

• 井原西鶴の作品に登場
  江戸時代の作家・井原西鶴が著した浮世草子（小説）には、「お礼詐欺」の手口が描かれています。当時の市井の人々の生活に根付いたリアルな詐欺の様子が垣間見えます。
• 被害者の特徴
  被害者は善意のある庶民層が多かったと言われています。「世の中の役に立ちたい」という純粋な気持ちが詐欺師の格好の標的になったのです。

現代の振込詐欺との共通点

「お礼詐欺」と現代の「振込詐欺」には、共通する要素が多く見られます。

人間心理を操る手法

• お礼詐欺：
  親切心やお礼をもらえる期待感を利用。
• 振込詐欺：
  「家族が困っている」という罪悪感や焦燥感を操る。

被害者の「良心」を狙う

お礼詐欺は「良いことをしたい」という気持ちを悪用し、振込詐欺は「家族を助けたい」という気持ちを悪用する点で共通しています。

詐欺師に騙されないためには？

江戸時代の知恵に学ぶ

江戸時代には「用心深さ」が詐欺を防ぐ最善の方法でした。当時の人々は、見知らぬ人の申し出に対して一呼吸置いて判断する癖をつけていました。現代でも同じように、「冷静さ」を保つことが重要です。

現代の対策

• 不審な電話やメールは疑い、公式な連絡先で確認を。
• 他人に相談することで冷静な判断が可能になります。

「お礼詐欺」の教訓を現代に活かす