詐欺被害体験談

実際に詐欺被害に遭った方々の体験談を集めたカテゴリーです。暗号資産詐欺やロマンス詐欺など、さまざまな詐欺の手口や被害状況を詳細に語る記事を通じて、詐欺のリスクを学び、被害を未然に防ぐための参考情報を提供します。これらの実話を共有することで、同じ被害に遭わないための注意喚起を目指します。

じじの恋

ロマンス詐欺の現実と私の体験—60代男性の視点から

ロマンス詐欺を考える—60代男性の視点から

酒井順子氏のエッセイ『ロマンス詐欺に思う』の概略

酒井順子氏が2025年2月28日付の北海道新聞で発表したエッセイ「ロマンス詐欺に思う」では、高齢の男性が相次いでロマンス詐欺の被害に遭った事例が紹介されています。

80代の父を持つAさんのケースでは、SNSで知り合った外国人美女に騙され、数千万円を送金してしまいました。相手は「娘さんには言わないで」と念を押し、男性はそれを忠実に守った結果、家族が気づくまで詐欺を疑うことすらありませんでした。

70代の叔父を持つBさんのケースでは、家に出入りしていた女性に「お付き合いしている」と思い込まされ、金銭を要求され続けた挙句、最後には音信不通になってしまったというものです。

このエッセイを通して、酒井氏は 「詐欺犯は、日本の高齢者が真面目でお金を持ち、さらに寂しさを抱えていることをよく知っている」 と指摘し、孤独が詐欺を引き寄せる要因になっていると考察しています。

私はこのエッセイを読み、自身の経験と重なる部分が多く、深く共感しました。以下では、私が実際に遭ったロマンス詐欺の話を交えながら、この問題について考えていきたいと思います。

私のロマンス・投資詐欺体験

私自身も、まさに酒井順子さんのエッセイにあるような経験をしました。数年前、短期間のうちに2件の詐欺被害に遭い、大きな金銭的損失を負いました。

最初のケースでは、「東京在住のマレーシア人ハーフ」と名乗る女性とSNSで知り合い、親しくなりました。彼女は「利益を生むネットショップを開く」という投資話を持ちかけ、最初は小さな金額から資金提供を求めてきました。次第に「広告費」「追加の仕入れ資金」などの名目で資金を要求され、気がつけば大きな額をつぎ込んでいました。しかし、ある日突然、彼女の連絡が途絶え、売上金も引き出せないまま終わりました。

2件目は、「マカオ在住の中国人ハーフ」と名乗る女性との出会いでした。彼女は国際的なゴールド投資の話を持ちかけ、「叔父がプロのトレーダーだから安心」と信用させてきました。彼女の指導のもと、専用のアプリを使って取引を始めると、最初は確かに利益が増えているように見えました。ところが、出金しようとすると「口座が凍結されている」と言われ、解除のためにさらに資金を入れるよう要求されました。その時点でようやく詐欺だと気づきましたが、すでに手遅れでした。

どちらのケースも、最初は相手を信用し、甘い言葉にほだされていました。冷静に考えれば怪しい話なのに、一度信じてしまうと「せっかく築いた関係を壊したくない」という心理が働き、疑うことをためらってしまったのです。

エッセイに共感したポイント

酒井氏のエッセイでは、80代や70代の高齢男性がロマンス詐欺に遭った実例が紹介されていました。

  • 「無視したら悪い」という心理
    SNSの友達申請を全て受け入れてしまったAさんのお父さんの話には、非常に共感しました。私自身も「せっかく縁ができたのだから」と思い、警戒心を緩めてしまった経験があります。

  • 詐欺犯は高齢者の「孤独」を知っている
    私のケースでも、「もう一度若い女性と恋をしたい」という願望がありました。詐欺犯はそこを巧みに利用し、甘い言葉で安心感を与えてきました。

  • 「だまされていない」と信じ込む心理
    詐欺だと気づくまでに時間がかかるのは、多くの被害者に共通する特徴です。私も「これは本物の関係だ」と思い込んでいました。エッセイに登場するAさんのお父さんも、詐欺を疑われてもなお信じ続けていたとのことで、胸が痛みました。


ロマンス詐欺に遭わないために

ロマンス詐欺を防ぐために、私が学んだことをいくつか共有します。

  1. 見知らぬ人からの連絡には慎重になる
    SNSやマッチングアプリで突然メッセージが届いても、すぐに信用せずに疑う姿勢を持つことが大切です。

  2. 一度でもお金の話が出たら要警戒
    「お金が必要」「投資すれば儲かる」などの話が出た時点で、詐欺を疑うべきです。

  3. 家族や友人に相談する
    一人で判断せず、誰かに話すことで冷静になれます。詐欺師は「誰にも言わないで」と言ってくることが多いので、その時点で警戒すべきです。

  4. ネットリテラシーを高める
    詐欺の手口を知ることで、怪しい話に対する免疫をつけることができます。警察や消費者センターのサイトにも情報が載っているので、定期的にチェックするとよいでしょう。

*ネットリテラシーとは、インターネット上の情報や事象を正しく理解し、安全に利用できる能力を指します。


最後に—寂しさと向き合う大切さ

酒井氏のエッセイの最後にあった 「寂しい人がちゃんと『寂しい』と言える空気が大切」 という言葉が印象的でした。詐欺に引っかからないためには、「孤独を埋めるために何かをする」のではなく、「孤独とどう向き合うか」を考えることが重要だと感じます。

私は今、詐欺の経験を踏まえ、リアルな人間関係を大切にするようにしています。オンラインのつながりだけに頼らず、地域のコミュニティに参加するなど、新しい交流の場を見つけることも一つの方法です。

ロマンス詐欺の被害は決して他人事ではありません。特に私と同じ60代、あるいはそれ以上の世代の方々には、「自分は大丈夫」と過信せず、常に冷静な目を持つことを心からお勧めします。


著者プロフィール

酒井順子(さかい・じゅんこ)
1966年、東京都生まれ。立教大学卒業。軽妙なタッチで時代を切り取るエッセイで知られる。2004年『負け犬の遠吠え』で講談社エッセイ賞などを受賞。著書に『処女の道程』『鉄道無常』などがあり、近著に『老いを読む 老いを書く』がある。

本記事は、酒井順子氏のエッセイ「ロマンス詐欺に思う」(2025年2月28日付 北海道新聞 朝刊)を参考にしつつ、筆者自身の経験を交えて執筆したものです。原文の詳細は北海道新聞をご覧ください。

出典・参考情報

  • 酒井順子「ロマンス詐欺に思う」(北海道新聞 2025年2月28日 朝刊)
  • 消費者庁「ロマンス詐欺に関する注意喚起」(公式サイト)
  • 警察庁「特殊詐欺の最新動向」(公式サイト)

※本記事は筆者の個人的な体験や意見をもとに執筆したものであり、原文の直接的な転載は行っておりません。詳細は各出典元をご参照ください。

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